― 判断は「誰のもの」なのか ―
前回の記事の締めで、助動詞が「意味を足す文法」ではなく、話し手の判断の位置を示す文法だという話をしました。
can/will/shouldを並べてみると、違っているのは行動ではありません。
話し手が、その行動をどのように判断しているか。
そこに違いがありました。
ここまで読むと、ひとつ気になる助動詞が出てきます。
中学英語で「~すべき」「~しなければならない」と言われて思い浮かぶのは、shouldだけではないでしょう。
きっと、mustも思い浮かぶはずです。
前回の記事でも触れましたが、mustはshouldとは少し性質の違う助動詞です。
では、shouldとmustは、何がどう違うのでしょうか。
- shouldは弱い義務
- mustは強い義務
このように覚えていたかもしれません。
でも、その理解のままだと、実際の英文では必ず迷います。
なぜなら、shouldとmustの違いは、義務の強さではないからです。
この2つの違いは、「どれくらい強く言っているか」ではなく、判断基準がどこにあるのかにあります。
この記事では、
- shouldがなぜ「提案」に聞こえるのか
- mustがなぜ「強制」に聞こえるのか
- 同じ行動でも、印象が大きく変わる理由
これらの内容を、暗記ではなく「考え方」で整理していきます。
ここで助動詞の理解を一度完成させましょう。
shouldとmustが混同されやすい理由
shouldとmustは、英語をやり直していると特に混同しやすい助動詞です。
理由は単純で、どちらも「義務っぽく」見えるからです。
学校では、こんなふうに習いました。
- should:~すべき
- must:~しなければならない
この説明を聞くと、多くの人は自然にこう整理します。
- shouldは弱い義務
- mustは強い義務
一見すると、とても分かりやすい説明です。
でも、この整理の仕方のままでは、実際の英文で必ず迷うようになります。
「強い・弱い」で考えると迷いが消えない
実際の英語では、このような場面が普通に出てきます。
- shouldを使っても、強く聞こえる場面
- mustを使っても、そこまで強制に感じない場面
もし本当に「義務の強さ」だけが違うのなら、こうした使い分けは説明できません。
その結果、「どっちも使えそうだけど、結局どちらを選べばいいのか分からない」という状態になります。
問題は「義務」ではなく「誰が判断しているのか」
ここで、比べる軸を変える必要があります。
shouldとmustは、どちらも義務のように聞こえることがあります。
でも、その義務を決めているのは誰なのかは、同じではありません。
つまり、問題は「義務かどうか」「強いか弱いか」ではなく、その判断が、話し手の中にあるのか、それとも外側にあるのかという点です。
前回の記事では、助動詞は「意味を足す文法」ではなく、話し手が主語の行動をどのように判断しているかを示す文法だ、という話をしました。
この考え方をそのまま使うと、shouldとmustの違いも整理できます。
次に見ていくのは、
・shouldは、誰の判断なのか
・mustは、誰の判断なのか
という点です。
ここが分かると、「義務だからどっち?」という迷いは、自然と消えていきます。
判断は「誰のもの」なのか
ここまでで整理してきたように、shouldとmustの違いは「義務の強さ」ではありません。
違うのは、その行動を誰が判断しているのかです。
同じ行動を表していても、判断の出どころが変わるだけで、文の印象は大きく変わります。
should:判断は話し手の中にある
shouldは、話し手が自分で考えた結果として出している判断です。
頭の中では、次のような感覚があります。
- これならできる(can)
- 今の状況なら、こうしよう(will)
- こうした方がいい(should)
つまり、話し手自身の判断が前に出ています。
たとえば、
You should talk to your manager.(上司に相談した方がいいですよ)
ここで示されているのは、話し手の個人的な意見や助言です。
- 状況を見て
- 自分なりに考えて
- その判断を共有している
shouldが提案や助言に聞こえる理由は、判断が話し手の中にあるからです。
must:判断の基準が主語や話し手の外にある
mustは、主語や話し手以外の判断が前に出る助動詞です。
そこにあるのは、
- ルール
- 規則
- 法律
- 安全基準
- 避けられない事情
といった、個人の意見とは切り離された外部の判断です。
たとえば、
He must wear a helmet.(彼はヘルメットを着用しなければなりません)
この文で示されているのは、
- 話し手がそう思っている
- 彼自身がそう判断している
という意味ではありません。
- 決まりがある
- 守らなければ危険
- 誰であっても従う必要がある
そうした主語や話し手を超えた判断を、そのまま文に出しています。
must が強制的・断定的に聞こえる理由は、判断の主体が個人の外にあるからです。
同じ行動でも、判断の出どころが違う
should と must は、同じ行動を表すことができます。
You should submit the report today.
You must submit the report today.
行動は同じでも、
- should:話し手の判断
- must:主語や話し手の外にある判断
このような違いがあります。
だから、「どちらが強いか」で考えると迷いますが、判断基準がどこにあるのかで見れば、自然に選べるようになります。
学校で習った説明は「結果」として正しい
学校では、
- should:提案・義務
- must:義務
このように習いました。
これは間違いではありません。
ただし、それは結果としてそう聞こえるという話です。
- 話し手の中の判断→ 提案・助言に聞こえる
- 個人の外にある判断→ 強制・義務に聞こえる
この整理ができると、should と must は暗記せずに使い分けられるようになります。
ここで一度、整理しておく
ここまでの話を、まとめるとこうです。
- should:判断基準は話し手の中にある
- must:判断基準は主語や話し手の外にある
これが分かれば、「義務だからどっち?」と迷うことはなくなります。
同じ文で比べてみる
「考え方は分かったけど、実際の文でどう違うのかを見たい」と感じている人も多いと思います。
そこで、行動をまったく同じにしたまま、shouldとmustを並べてみましょう。
You should submit the report today.
You should submit the report today.(今日はレポートを提出した方がいいですよ)
この文で前に出ているのは、話し手の判断です。
- 今日中に出した方がよさそう
- 状況的に、その方が無難
- 自分の考えとして勧めている
話し手からみた判断基準です。
相手に選択の余地が残っているため、助言・提案として聞こえます。
You must submit the report today.
You must submit the report today.(今日はレポートを提出しなければなりません)
行動は同じです。
レポートを提出する、という一点も変わっていません。
違うのは、判断の出どころです。
この文では、
- 締切が決まっている
- ルールとして義務づけられている
- 守らなければ問題になる
といった、主語や話し手の外にある判断が前に出ています。
だから、選択肢はありません。
文全体が義務・強制として聞こえます。
比べるポイントは「強さ」ではない
ここで改めて確認しておきたい2文の違いのは、
- 言い方がきつい/やさしい
- 義務が強い/弱い
ではない、という点です。
本当の違いは、ただ一つ。
その判断を、誰がしているのかです。
別の例でも確認してみみましょう。
You should wear a helmet.(ヘルメットを着けた方がいいですよ)
→ 話し手の判断。
安全を考えた上での助言。
You must wear a helmet.(ヘルメットを着用しなければなりません)
→ 規則や安全基準。
個人の意見ではない判断。
行動は同じでも、文の性質はまったく変わります。
ここまで来れば、選び方はシンプルです
shouldとmustで迷ったら、自分にこう問いかけてみてください。
- これは自分(話し手)の考えか?
- それとも誰であっても従う必要がある判断か?
前者なら→should、後者なら→must
それだけです。
助動詞は、行動を説明する文法ではありません。
判断の位置を示す文法です。
この視点で見ると、shouldとmustは「似ている助動詞」ではなく、まったく役割の違う助動詞だと分かります。
社会人のシチュエーションで見る should / must
ここまでで、shouldとmustの違いが「判断は誰のものか」だと分かりました。
次はそれを、仕事や日常のシーンに当てはめて確認します。
should:判断は話し手の中にある(提案・助言)
【例:1】
You should check the numbers again.(もう一度数字を確認した方がいいですよ)
話し手が、
- ミスが起きそう
- 念のため見た方がよさそう
と考えた上での助言です。
相手に最終判断が残っています。
【例:2】
We should discuss this in the next meeting.(次の会議でこの件を話し合った方がいいですね)
決まりではありません。
「今の流れだと、その方がよさそうだ」という話し手側の判断です。
【例:3】
I should send him a message today.(今日中に彼に連絡した方がよさそうだ)
ルールではなく、自分で状況を考えた結果の判断。
自己判断としてのshouldです。
must:判断は主語や話し手の外にある(ルール・必然)
【例:1】
You must submit the report by 5 p.m.(レポートは17時までに提出しなければなりません)
- 締切が決まっている
- 守らなければ問題になる
個人の意見ではない判断が前に出ています。
【例:2】
Employees must wear their ID badges.(社員はIDカードを着用しなければなりません)
これは、
- 上司の好み
- 話し手の考え
ではありません。
会社のルールそのものです。
【例:3】
You must follow the safety instructions.(安全指示に従わなければなりません)
危険を避けるための外部基準・安全規則。
誰が話しても、内容は変わりません。
同じ場面でも、意味合いは変わる
たとえば上司が部下に言う場合でも、
You should finish this today.
なら、「できれば今日中に」という判断の共有。
You must finish this today.
なら、「今日は必須」という逃げられない判断。
立場ではなく、判断の出どころが違います。
社会人英語では、ここを意識する
実務でshould/mustを使うときは、次の点を意識すると迷いません。
- これは自分(話し手)の考えか?
- それともルール・期限・決まりか?
自分の判断→should、外部の判断→must
これだけです。
ここまでの整理
社会人の場面では、
- should:判断を共有する言い方
- must:判断を伝達する言い方
と考えると、より実感に近くなります。
ここで押さえておきたいこと
shouldとmustを、「義務の強さ」で覚えようとすると、どうしても混乱します。
でも、ここまで見てきたように、比べるべきポイントはそこではありません。
shouldとmustの違いは、こう整理できる
ここまでの内容を、できるだけシンプルにまとめると、こうなります。
・should
→判断は話し手の中にある
→自分で考えた結果を伝えている
・must
→判断は主語や話し手の外にある
→ルールや必然をそのまま伝えている
どちらも「~すべき」「~しなければならない」と訳されることはありますが、訳は結果にすぎません。
「弱い義務/強い義務」で考えなくていい
shouldを「弱いからshould」、mustを「強いからmust」と考える必要はありません。
考えるべきなのは、ただ一つ。
この判断基準は、どこにあるのか?
それが分かれば、自然にどちらを使うのかは決まります。
助動詞は「言い方」ではなく「判断基準」
shouldとmustの使い分けは、言い方を柔らかくしたり、きつくしたりするための文法ではありません。
判断の基準が話し手か、それ以外か
その立ち位置によって使い分けるのです。
この視点で見ると、shouldとmustは、似た助動詞ではなく、役割の違う助動詞だと分かります。
ここまで理解できれば十分
ここまで来れば、shouldとmustを完璧に使い分けられなくても問題ありません。
大切なのは、
- 暗記で選ばないこと
- 強弱で迷わないこと
- 判断の出どころを見ること
この3つです。
助動詞の整理は、ここで一度完成する
ここまでで、shouldとmustの違いを「判断は誰のものか」という視点で整理してきました。
これを含めて、これまで扱ってきた助動詞を一度、同じ地図の上に並べてみましょう。
助動詞は「判断の置き場所」を示している
助動詞は、行動そのものを説明する文法ではありません。
その行動を、どこから判断しているかを示しています。
これまで見てきた助動詞を並べると、次のように整理できます。
can
→話し手の基準で可能性(能力・条件)を判断している。
→「これならできる」
will
→話し手の基準で意思を判断している。
→「こうしよう」
should
→話し手の基準で可否を判断している。
→「こうした方がいい」
must
→判断の基準が主語や話し手の外にある。
→「そうせざるを得ない」
ここで大切なのは、どれが正しい/偉いという話ではないということです。
英語は、状況に応じて判断の置き場所を切り替えているだけです。
助動詞を「意味」で並べなくていい
学校では、
- can=できる
- will=未来
- should=義務(弱)
- must=義務(強)
というように、意味のラベルで整理してきました。
でも、そのやり方だと、
- 似た意味が並ぶ
- 境界があいまいになる
- 使う場面で迷う
という問題が起きます。
一方で、「判断はどこにあるか?」という軸で見ると、助動詞同士がぶつからずに並びます。
ここで助動詞はいったん区切り
「助動詞は意味を足す文法じゃない」と「shouldとmustは何が違うのか」の記事では、
- 助動詞は意味を足す文法ではない
- 助動詞は判断の位置を表す文法
- should/mustは判断の出どころが違う
というところまで整理しました。
これで、助動詞については必要な視点が一通りそろった状態です。
細かい使い分けや例外は、この先いくらでも出てきます。
でも、土台になる考え方は、ここで完成です。
次に進むと、見えるものが変わる
前記事と今記事では、話し手が、その行動を何を基準に判断しているか
を整理してきました。
- 話し手が可能だと判断している(can)
- 話し手がそうしようと判断している(will)
- 話し手がそうした方がいいと判断している(should)
- 話し手や主語以外がそうせざるを得ないと判断している(must)
助動詞は、行動そのものを変える文法ではありません。
行動に対して【誰が】【どのような判断をしているのか】を示す文法です。
そして、次に見る不定詞と動名詞は、行動そのものを、どう捉えているかを整理する文法です。
- まだ向かっている途中の行動なのか
- すでに頭の中で一つの出来事として扱っている行動なのか。
その違いが、不定詞(todo)と動名詞(doing)の使い分けとして表れます。
助動詞で【誰が】【どのような判断をしているのか】を判断したあとに見ると、不定詞・動名詞は暗記すべきルールではなく、行動の見え方を整理する文法だと分かります。


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