― 話し手の「立ち位置」を決めているだけ ―
be動詞や一般動詞、疑問文や否定文、時制や進行形・完了形。
ここまで読み進めてきた人は、「英語の仕組みが少し見えてきた」と感じているかもしれません。
でも、次に出てくる can / will / should あたりで、急に手が止まります。
「can はできる、will は未来、should はすべき」
意味は知っているのに、文を作ろうとすると、どれを選べばいいか分からない。
学生時代も、助動詞が出てきたあたりから英語が“感覚ではなく暗記”になった記憶がある人は多いはずです。
でも、はっきり言っておきます。
助動詞は、新しいルールを覚えるための文法ではありません。
英語はここで、意味を増やしているわけでも、仕組みを複雑にしているわけでもないのです。
助動詞が苦手になる本当の理由
can、will、should。
英語をやり直していると、ほぼ確実にここで手が止まります。
意味は知っているのに、いざ文を作ろうとすると、どれを選べばいいか分からない。
それは、英語力が足りないからではありません。
助動詞を「日本語訳」で考えようとしていること自体が、ズレの原因です。
「can=できる」
「will=未来」
「should=すべき」
こう覚えると、文を作るたびに迷うのは自然なことです。
助動詞は「行動」ではなく「立ち位置」を決める
英語の文は、まず行動があります。
I go.
これだけで、文としては成立しています。
「行く」という出来事を、そのまま置いている状態です。
ここに助動詞が入ると、新しい行動が増えるわけではありません。
変わるのは、その出来事に対して、話し手(=文の主役)がどこに立って判断しているかです。
動詞は「何をするか」
go / work / buy / call
これらは、行動そのものを表します。
助動詞は「どう関わるか」
I can go.
I will go.
I should go.
どれも「行く」という行動は同じです。
違うのは、行動ではなく立ち位置です。
主語が動詞に対して「どのように向き合っているか」を付け加えています。
can / will / should を並べてみる
I go.(※行く)
事実を、そのまま置いている。
特別な判断は含まれていません。
I can go. (※行ける)
「行く能力がある」というより、状況的に可能かどうかという立ち位置。
I will go. (※行くよ)
未来の話というより、今、その場で実行すると決めた立ち位置。
I should go. (※行かなきゃ)
義務というより、俯瞰して考えた結果の判断。
助動詞は、感情や判断を長く説明しなくても、一語でにじませるための装置です。
社会人のシチュエーションで見る助動詞
can
I can join the meeting today.(今日はその会議に参加できます)
能力ではなく、「スケジュール的に問題ない」という判断。
I can send the file this afternoon.(そのファイルは今日の午後に送れます)
「送れる能力がある」ではなく、今の状況なら可能という判断。
We can talk after lunch.(昼食後に話せます)
予定や流れを踏まえた、現実的な余地があるという立ち位置。
will
I’ll check it and get back to you.(確認して、あとで連絡します)
未来の予測ではなく、今、その場で決めた意思。
I’ll handle this issue.(この件は私が対応します)
これから起きる話というより、自分が前に出る決断。
I’ll call you later.(あとで電話します)
単なる未来ではなく、そうするつもりだと示す立ち位置。
should
We should discuss this again.(この件はもう一度話し合った方がいいですね)
命令ではなく、「その方がいい」という提案。
You should talk to your manager.(上司に相談した方がいいですよ)
義務ではなく、状況を考えた上での助言。
I should leave soon.(そろそろ出た方がよさそうだ)
ルールではなく、今の流れを見ての自己判断。
ここで押さえておきたいこと
どの例文でも、助動詞は「意味」を足しているわけではありません。
学校では、助動詞をこう習いました。
- can:可能・許可・能力
- will:意思・未来
- should:提案・義務
これは間違いではありません。
ただし、結果だけを切り取っています。
その結果が生まれる理由を、「立ち位置」でまとめると、こうなります。
- can→行動そのものより、状況や条件がどうかを基準にしている(だから「可能・許可」になる)
- will→状況よりも、主語の意思を前に出す(だから「意思・未来」になる)
- should→行動に直接踏み込まず、一段引いた立場から判断する(だから「提案・義務」に聞こえる)
この違いが分かると、助動詞を訳で選ばなくて済むようになります。
助動詞は『判断の位置』を表す文法
ここまで見てきたように、助動詞は行動を増やす文法ではありません。
- 行く
- 話す
- 決める
こうした行動自体は、すでに動詞が表しています。
助動詞が示しているのは、その行動を、どこから判断しているかです。
can は、行動そのものではなく、状況や条件を基準に見ています。
will は、状況よりも、話し手(あるいは主語)の意思を前に出します。
should は、行動に踏み込まず、一段引いた位置から冷静に判断します。
学校では、can=可能、will=意思、should=義務と習いました。
それ自体は間違いではありません。
ただし、本質はもっとシンプルです。
違いはひとつだけ。
話し手が、どの立ち位置からその出来事を見ているか。
助動詞は、意味を足す文法ではありません。
話し手の立ち位置――つまり「判断の位置」を示すための文法なのです。
なお、助動詞であるmust は、話し手の判断というより、外側のルールや避けられない必然が前に出る助動詞です。
性質が少し異なるため、この記事では扱っていません。
ここまで、助動詞が「判断の位置」を表すことを見てきました。
では、話し手の判断が前に出る should と、それとは少し性質の違う must は、どこがどう違うのでしょうか。
この違いを整理すると、助動詞の見え方がもう一段クリアになります。


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